わざと自分からケンカをふっかける時がある。
オマエが怒ってる顔に欲情するんだと抜かしやがったあのクソ野郎の言葉を確かめるために。
蹴ったり殴られたり、自分の身体が相手のどこかにヒットするたびにぞくぞくして血が滾る。
純粋な力のせめぎ合いが気持ちイイ。たまらねェ。
知らないウチに笑っているような、鳥肌が立つような、こんな状態を欲情というならそれはオマエだけじゃないんだ。
甲板で始まったケンカは格納庫になだれこんで、ドアが閉じられたとたんに猛烈な勢いで唇をふさがれて、ぶつかった前歯が鳴る。
ゆっくり重ね合ったあと舌をつつきあったり絡めたり、そんな洗練とは無縁な貪りかたがいつの間にか当然になっていた。
差し込まれる舌に噛みつくと、口の中に血の味。
制止じゃない。クソ野郎が興奮するのをわかってやってるんだ。
もっと熱くなれ。
少し身体を離す。思ったとおり腕が追ってきて頭を抱え込んで唇がすいついてくる。
深く深く。
血と唾が混ざって口の端からこぼれていく。
もっと熱くなれ。
このカラダを本気で欲しがれ。 お前の本気の目で俺は欲情する。
illust:FUJIKO ss:MOMOKO KOHFUKUJI
