【ある さかなうりの じゅうごやのよる】
ながやぐらしもなれてきた
もうにじゅうさんになるけどよめさんはほしくない ひとりがきらく
そうおもってたのにおかしなどうきょにんができた

あいつはろうにん まだじゅうはち
けっこういいもんきていきだおれてた
さっそくきものはしちにいれてくいもんかってきて なんとなくめんどうみた

それからふたつき
いっしょにすんでてちっともいきぐるしくない
かるくなったてんびんぼうをかついで いえにかえるのがたのしみ

さいきんは きんじょのがきにてならいをおしえて
おやがげっしゃがわりにもってくるにつけやこめで めしもゆたかだ
さしむかいでばんめしくいながら ぽろっとくちからでた
「ずっとこうやってくらしていくのもわるかねぇな」

「わたしもそうおもいます」

なんだおい おれ しあわせなんじゃねぇの
にやけそうになるのをがまんしてわざといってみる
「でもいつかはしかんするんだろ
そしたらこんなこきたねぇながやなんかでてくだろ」

「しかんはのぞみません
やっとうはだめなのです」

もうだめだかおがゆるんでめしがくちからこぼれそうになる
「だらしねえな」
そんなこといわれてわらってるさむらいがあるか

こんやはじゅうごや すすきをひっこぬいてだんごをかって
おれのがらじゃねぇけどつきみでもしよう
いまけぇったぜ

せまいどまににほんざしがさんにん なんだおいどうなってんだ
「なにかおまちげぇじゃねえですかい」
そういってやったのにさむらいどもふりかえりもしねえ

「おいでください わかさま
ごじぶんのおたちばがおわかりなのですか」

「なにがたちばだ」
おくからはげしいあいつのこえがする こんなこえはきいたことない
わけぇのにいつもしずかなはなしかたで おれなんかとはてんでちがってたはず

「ははうえをどくさつし わたしをやしきからおいだしたのが
だれであるかしらぬとはいわせぬ いまさらよまいごとをもうすな」

なななんだなんだ
よくわかんねぇけどこいつらはおまえのかたきなのか
「おいてめぇら おれはさんぴんとやりあうのなんざこわくねぇんだ
とっととでていきやがれ」

「ちょうにんのでるまくではない」
「このおかたはまつだいらさまけんじゅつしなんやく○○けの およつぎであられるぞ」
「ぶれいなくちはゆるしてやる そこをどけい」

けんじゅつしなんやくなんざ こうだんのなかでしかきいたことねぇよ
「おいやっとうはだめなんだろ いっちまったりしねぇだろ」
おれにむけられるあわれみのめ
「わかさまは ○○りゅう めんきょかいでんじゃ」
はなしがまるでちがう
「だましてたのかよ」
「ちがう!ちがう!」
さむらいをつきのけて あいつがどまにおりてきた はだしだ
こんなときにおれ へんなこときがついてる まぬけだな
「ほんとうにけんはすてるつもりだった!」
ひっしなかおで おれのむなぐらをつかんで いまにもなきそうだ

「おもどりになられぬときは おとりつぶしとあいなりましょう」
「われらをはじめ いちぞくろうとう せんすうひゃくにん
わかさまの ごけつだんをおまちもうしあげております」
しんのぞうがはれつしそうだ こいつがどうするか わかるから
やっぱり ては はなれていった
うなだれて おれのかおをみないまま「おせわになりました」とひとこと

きがつくと もうだれもいなくて つきがでてた
なんだかひざのちからがぬける なんでだ
あがりかまちに ぽつんと あいつのぞうり
はだしのまま いっちまった ったくとんまだなぁ

わらったつもりが こえにならなくて せまいへやががらんどうで
はをくいしばってないている あるおとこの じゅうごやのよる





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※某スレに昔投下したものです。読みにくくて申し訳ない。