2日後、朝食のテーブルにナミが新聞を持ってきた。

「あの騒ぎのこと載ってるわよ。ちょっと事実と違うけど。」


食べることに夢中なクルーをよけて、サンジはそれを受け取った。
勃発するクーデターの記事の中に、それは中位の扱いで記されていた。

『・・・エント領事館を襲撃した海賊団は全員処刑される見込み。なお内乱と相次ぐ不作で昨年の餓死者が500人をこえた国民に対し、領事館は食料の配給を始めた。本来××年度から開始されているはずであったが、この間の事情を領事館側は明らかにせず・・・』
他のクルーにも、海賊団や領事とのやり合いについてはもう話してある。
「驚かないのね。私たちかばわれてるうえに、食料の配給まで始めたって書いてあるのに。」
記事の中に、麦藁海賊団の名前はどこにも出てこない。だがそれは、かばわれたのとは少し違うものだとサンジは思っていた。彼が海賊ではなく料理人として貫いた意志を、モンタナも同じように受け止めたのだった。

「おっさんたち、腹いっぱい食ってるかな」
パンパンに膨れた腹をさすりながらルフィが言った。
「お前は食い過ぎだけどな、クソゴム」
新聞に目を通している間に、サンジの分の朝食まできれいに平らげられていたのだった。
「俺だけじゃねぇっ!ゾロも食ったぞ!」
ゆらりとサンジが立ち上がる。同じタイミングで席を立ったゾロは、
「作り甲斐があって何よりだろうが。感謝しやがれ」
と言いながら甲板に出ていった。
もちろん蹴り飛ばすためにサンジもキッチンを出た。右手ではしっかり船長の襟首をつかんでいる。

 コックにとって、この船は確かに極上の仕事場だった。



END



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