病院の駐車場でベンツを一台つぶして宗一郎にメッセージを送ったあと、
ボブと雅孝はまた走って道場まで戻ってきた。
ジョギングペースではなく、追っ手を振り切るための全力ダッシュだったので
二人ともさすがに息が上がっている。
「クソッ、車で追っかけてきやがって……世界新出てたぞ今の走り……」
ボブは床にしゃがみこんだ。向かいに雅孝も腰を落としたが、わずかに息を整えただけで立ち上がった。
「さてと。どうするボブ。組み手、続きやるか?」
「……いや……宗一郎にあんなこと言っちまった手前、俺も踏み出さなきゃならねえことがある。」
怪訝な顔をする雅孝の右手首をボブがつかんだ。
立ち上がりながら力をかけ、わざと雅孝を壁に押しつける。
「ど、どうかしたのか?!ちゃんと立てるか?」
怪我でもしたかと心配しているのだ。根はぼっちゃんだ、とボブは少し笑った。

 左の手首も握られてから、はじめて雅孝の目が不審の色を浮かべた。
「ボブ?何なんだよ……」
肩の高さで壁に押しつけられた両手首は、軽く力を入れたくらいではびくともしないはずだ。
20cmの身長差のせいで雅孝はボブを見上げることになる。
普段ならどうということはないが、こんな姿勢では屈辱的に感じるかもしれない。



「嫌だったら遠慮なくぶっ飛ばしてくれ。」
耳に熱い息がかかるように言うと、一回り細い身体がびくっと硬直した。
筋肉がよく発達した腿を雅孝の股間に強く押し当て、ゆっくりと円を描くように動かす。
「何のマネだよ?!」
「あんたが好きだ。」
「―――なっ……えぇ?!とにかくやめろ、離せよ!冗談じゃすまないだろ!」
「冗談のつもりはねえよ。」
右手を離しても、呆然としている雅孝は反撃してこなかった。
それをいいことにトレーニングウェアと下着を膝近くまで一気に引きおろす。
「わ……!!」
色白で端正な面が、紅潮し取り乱している様はただでさえそそられるものだが、
そうさせているのが自分だという事実がボブをさらに興奮させた。
「すげぇヨクしてやるよ。センパイ。」
雅孝が少なからずコンプレックスを抱いているのは承知のうえで、まだやわらかいそれに指を絡めた。
言われたことも、この状況もまるで理解できないという顔でボブを見ていた雅孝は
急に羞恥に襲われたのか目をそらした。
半ば以上皮におおわれている性器は、ボブの手の中で少しずつ硬くなっていく。
「剥くぜ」
返事を待たずにゆっくりむきおろしていくと、決して小さくはない声がもれた。
「あぅっ!……く、はっ……」
刺激が強すぎるのか、雅孝はがっくりと前のめりになって腰を後ろに引こうとしている。
「逃がさねえ。」
「んはぁッ!あっ、あぁっ!や、やめっ、ボブ、ん、くっ……」
追い詰められた雅孝が激しく頭を左右に振る。艶のある黒髪が乱れ、ボブの眼下に雅孝のうなじがあらわになった。
自由な手は気を撃ち込む余裕もないのか、ボブのTシャツの袖をぎりぎりと握り締めている。
褐色の指が足の付け根にもぐり込み、会陰をさぐった。はりつめたそこを軽く押すたびに白いうなじに血が上っていく。
先端ににじんだ体液は、すぐに糸を引きながらボブの手に垂れはじめた。
青臭いにおいが立ちのぼる。


「限界だろ。イッていいぜ、センパイ。」
ふくれた裏筋を親指でこすり、うなだれた首筋に唇を寄せて囁く。
「ふ……あっ……!ああぁッ!」
たやすく昇りつめた雅孝はがくがくと膝を震わせながら、濃い白濁液を迸らせた。
「あく……あぅ……っ」
「あんたが好きだ。」
「んん……っ」
「あんたが好きだ……」
ぶるりと雅孝の身体が震え、荒い息をつく。返事はなく、うつむいたままで顔も見えないが
ボブは無理に上を向かせようとはしなかった。
かわりにずっと掴んだままだった左手を解放し、自分のジャージと下着を腿までずらした。
雅孝のものと同じ器官とは思えないほど凶暴に猛ったモノが現れる。
息を呑む気配がし、雅孝が顔を上げてボブを見た。男にしては大きな目が快感の名残か涙ぐんでいる。
たまらない疼きを感じながら、ボブは意地悪く言った。
「突っ込んだら、壊れちまうだろうな。」
背から回した手で尻を撫で、閉ざされた部分を精液に濡れた指先でつつく。
「……っ」
無言のまま雅孝はボブを突きのけようとするが、体格と体力だけならボブは圧倒的に優位にある。

雅孝が発頸技を使わないのは集中できないせいではなく、手加減ができなくなるからだろうとボブは思っている。
そして高柳の血を引くにしては優しすぎるこの男が、たとえ自分を汚そうとする相手でも
仲間である限り殺す覚悟で攻撃などできないと読んでもいた。
卑怯なヤロウだと自分を罵っても、後戻りはできない。なかったことにはできるわけがない。
抗う身体を抱きすくめ中指をねじこんでいく。
暴れる太腿の間に血管の浮いた自分のモノをはさみ、腰を動かす。
「や……っ!やめろ、もうこんなのっ!こんなのは……いやだっ……」
苦鳴まじりの制止の声にボブ自身も身を裂かれるような痛みを感じながら、根元までうめた中指で中をかき回す。
しなやかな太腿はボブが吐き出した先走りでぬめり、こすりつけるたびにぬちゃぬちゃと音がする。

「あんたが……好きだ……っ」
ドク、とあふれ出た精液を雅孝自身にかけ、手のひらで何度もぬりつける。
「う……」
不快そうに眉を寄せる顔に思いきりぶちまけたい衝動にかられながら、
ボブは指を抜いて両手で雅孝の腰をがっちりとつかみ、残りの精を放った。
「はぁっ……ぶっ殺されてもいい……ってか、本望だ……」
もう二度と触れることすらかなわないかもしれない身体を、強く抱きしめた。


「離せよ、もう満足だろ。」
ボブが腕を解くと、雅孝は背を壁に預けてずるずると座り込んだ。
「なんでだよ……なんでこんな……千秋ちゃんは……」
「全然別だ。」
膝までずり落ちていたジャージを履きなおし、ボブはタオルを拾って雅孝に差し出した。
「ぬらしてきたほうがいいか?」
きょとんと見返した顔が、言葉の意味を理解してカッと赤くなる。
タオルは乱暴に奪い取られた。
「見るなよ!拭くから!」
また勃ちそうだ、と思いながらボブは素直に後ろを向いた。
そのまま数分がすぎ、雅孝が立ち上がる気配がした。
「もうそっち向いてもいいか?」
「だめだ。俺がここ出るまでそのままでいろよ。」
「OK。死刑か執行猶予か教えてくれ。」
「……好きだって言えば何しても許されるなんて思うな。」
「傷つけたことはすまなかった。」
声が道場の出口へ移動していく。
「……後悔……いや反省してるのか?」
「してねえ。今もぶちこみてえと思ってる。」
「お前らしいな。」
固い声にわずかに苦笑がまじった。



「予備戦が終わったら、望みどおりぶちのめしてやるよ。お前が勝ったら好きにしろ。」
ざくざくと靴音が庭を遠ざかっていく。
ふうっとボブは息を吐いた。
「勝ったら、か。無茶言うぜ。」
入学した頃にくらべれば、この数ヶ月で桁違いに強くなった。
それでも、80人を素手で倒して返り血も浴びない男に勝てるとは思えない。
武道家にあるまじき不純な動機で、どこまでいけるかやってみるしかない。
振り向いたボブはあることに気づいた。
床にこぼれた体液まで雅孝はきれいに拭っていったらしい。
笑みを浮かべ、誰もいない空間にボブはもう一度つぶやいた。

「あんたが大好きだ、センパイ。」






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