軽く痙攣した後動かなくなった男を振り返りもせずに、サンジは何時間ぶりかのタバコに火をつけた。
「あーうめェ・・・コラ腹巻き、俺ばっかり働かせやがったな。」
「てめェが勝手にやっちまったんだろうが!」
ゾロの言い分にはおかまいなしで、サンジはモンタナに歩み寄った。

「えーと・・・このままだと死ぬとか、そういうことはないよな?」
差しだした手は癖みたいなものだ。だが、モンタナは不思議そうにその手を見た。
「なぜ、殺さない。」
「弱ってる女は看病するもので、戦うもんじゃねェんだ。」
「おめでたいな。食料を持ち去ったのはお前の仲間らしいが、今あれだけ施したところで、本国から援軍が来れば民がもっとひどく虐げられるとは思わなかったのか。」
サンジは無言でジャケットを脱ぐと、モンタナの肩にかけた。
「そのときは全部麦藁海賊団のせいにしてくれよ。」


「おい、もう行くぞ。」
スタスタとゾロが歩き出す。
「コラ腹巻き。そっち行ったって外には出られねェよ!」
眉間にしわをよせて引き返してくる剣士を確認してから、サンジは塀を壊して外に出た。ポケットから取り出したログポースは、暴れたわりに無事を保っている。
「ナミさーんvv今帰ります!」


 港には火の手が上がっていた。
伝令から領事館部隊が全滅したことを聞いた海賊船の残党が、欲と仇討ちの両方でGM号を砲撃し、反撃されて轟沈したのだった。ルフィに跳ね返された砲弾とウソップが撃ち込んだものとで穴だらけになった船体の、舳先の部分がまだ海上で燃えており、夜更けだというのに港は明るかった。

 海軍が来たら面倒だ、と焦れて待つクルーのもとへ、二つの人影が駆け寄ってきたのはまもなくだった。
「ナミさぁぁぁんvv愛のログポース、ただいま到着です〜!!」
「おそーーーい!!すぐ出航するから早く乗って!」
投げられた縄ばしごを伝って、ゾロとサンジが素早く甲板に飛び移ると、船はすぐに碇を上げた。



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