「ったく手こずらせやがって。」
 罪悪感はひとかけらもなく、ゾロは地面にのびているサンジを肩にかついだ。数少ない通行人が、関わりあいにならないよう見てみぬふりをしていることには気づいてもいない。最近タイミングが悪いのか二人きりになる時間がとれず、煩悩を発散させるために異様に鍛錬に打ち込んでしまった(おかげでさらに筋力は増えたが)。そんなわけで、数週間ぶりにケンカ以外で触れるサンジの身体にゾロの意識が集中するのも無理はなかった。

 きっと探せば買出し用の財布は出てくるのだろうが、鬼のようなナミの顔が脳裏をよぎったので、遣ってしまうのはやめにした。
 なにより、食材が買えないとコックが困るはずだ。
ゾロは基本的にサンジを困らせたくはない。

方向は往々にしてずれまくっているのだが。

「おじさん」

幼い高い声がした。サンジを肩にそのまま歩き続けていたゾロは、二度目の呼びかけにやっと気づいた。
「……オレのことか?」
いやーーーな顔で振り向くと、ゾロの腰までもないほどの小さな子どもがじっと見上げている。クセの強い茶色の髪は伸び放題、服もあちこち汚れていたが、スカートだったのでかろうじて女の子だとわかった。

「おじさん、その人どうするの?」

「オマエに関係ねェだろ。ウチ帰れ。」
「今、ママはお客さんだから帰れないの。ねえ、おじさん悪い人なの?」
「海賊だ。」

ゾロの歩幅に小走りでついてきていた彼女は、その言葉を聞くと怖くなったのか足を止め、ぐんぐん遠ざかっていく後姿を見送った。


 裏通りを進むゾロは、おあつらえ向きの場所をみつけた。
建物の背面が三方を囲んで鍵の手になった、薄暗い袋小路。壊れかけた樽や木箱がいくつかある他は、人どころかカラスも寄り付きそうにない。
「よし、ここでいいだろ。」
一応地面に頭をぶつけたりしないように気を配りながら、肩からぐったりした体を下ろす。歩いている間中感じていたサンジの体温や呼吸のせいで、ゾロはかなり前のめりになってしまっていたが、自分のズボンより先にサンジの服に手をかけ、そこでふと気づいた。
 目を覚ましたらまた暴れるに決まっている。
「……縛っとくか。」

ゾロの針路は、すでに修正不可能なところまで入りかけていた。




 頬をぱしぱし叩かれて、サンジは目を覚ました。
「んあ?」
凶暴な剣士の顔が目の前にあり、反射的に蹴り飛ばそうとして足がもつれる。いぶかしげな様子を見て、ゾロがにやりと笑う。サンジは、とたんに自分の置かれている状況を把握してしまった。
「こここここの、ヘンタイ剣士ーーー!!!」
木箱に腰掛けた状態で、穿いていたものはまとめて膝までずりさげられ、両腕はなにかで縛られて頭上にある。おそらく建物の配水管あたりにくくりつけられているのだろう。背中には壁があたっている。
「ほどけほどけアホーーー!テメェ、血迷うのもいいかげんにしろ!もう絶交だ!」
「ぜ、絶交……?」
どちらかといえば、サンジのほうが血迷っていた。怒りのままに口走った言葉に、ゾロが笑いをこらえているのを、ひしひしと感じる。
「絶交って、おまえ……」
「うぅるっせぇぇええ!いいからほどけっつってんだよ!俺の人権とかこんなことして俺が傷つくとか、どうでもいいのかこのクソマリモ!変態腹巻!」
「ギャアギャアうるせェな。いきなりぶち込むぞ、テメェ。」

低い声にびびったわけではないが、サンジはとりあえず黙った。いくら昼間とはいえ、通行人がいないとも限らない。どう見ても自分は被害者だが、どうあっても救助されたくはない状況だ。
「……」
「やっぱり縛っといたのは正解だったな。口もふさいどくか?」
すっかり道を誤った剣士は、しゃあしゃあと言い放つと怒りで紅潮しているサンジの頬を片手でおさえた。
またバンダナを口に突っ込む気か、とサンジは身構えたがゾロの腕にはバンダナがなく、予想外の攻撃をうけた。

「……ちょっ、おい……んんっ」
強く重ねられた唇から入ってきた舌が、サンジの舌をからめとり、緩急をつけて吸い上げる。
「……っは……ん、っ」
しびれるほど吸われた後で舌先を甘噛みされ、また吸われる。丹念な愛撫に気をとられているうちに、ゾロの指がシャツの上からサンジの乳首をとらえていた。
「うーっ…んんんっっ」
 やばい、こいつ絶対やばい、マジでここでやる気だ、という焦りよりも身体の火照りが勝ってきたころ、やっと唇が解放された。

「……クソヤロウ、最低だエロ剣士。」
「エロいのはどっちだ。ここは勃ちっぱなしじゃねェか。」

 ゾロの膝が両腿をわって、股間にごりごりと押し当てられた。すっかり勃起しているものをざらついた布地がこすり、サンジは小さく声を上げる。背筋をくだった快感が、腰にとどまり熱を高めていく。
 シャツをたくしあげて肌に触れたゾロの指が、胸の突起をこねくり回した。
「あ、あふ……っ」
サンジの口から吐息のような喘ぎ声がもれた。ただ膝で刺激されるだけの下腹部がもどかしく、無意識に腰をすりつけそうになってハッとする。

 そんな場合じゃない。

 建物の中にも人はいるだろうし、すぐそこは往来である。声を聞きつけられでもしたら、えらいことになる。
 だがゾロの頭からそんな瑣末事はすっ飛んでいるようだった。シャツのボタンを外し、前をはだけてしまうと、とがった乳首を吸い歯をたてている。

「あッ……やっ、やめろって……っ!人が来たら……」

「斬る。」

やりかねない。

 ゾロの口がはなれた。唾液で濡れた部分が空気に触れ、じんじんと痺れるような快感をもたらす。反対側も同じようにされるころには、サンジの先走りがゾロのズボンの膝をすっかり濡れ光らせていた。

 まだ手で触れられていなかった性器の先端を、ゾロの指がかすめた。

「ああうッ」

ゾロはびくっと跳ね上がる腰をおさえつけて根元を軽く握ると、かすかに触れるくらいに親指の腹を往復させた。

「あっ、ああっ!うぁ、そ、それやめ……っ」

サンジの声が震えている。もっと強い刺激がほしいのだろうが、絶対に自分からは言わない。ゾロはそれをよく知っている。ただ、普段は聞けない焦れたサンジの声を聞くと、興奮する。目の前の肉体を食いちぎりたいのか、包み込みたいのか、自分でもわからなくなるほどに。
 この身体を知る前の自分が、どう生きてきたのか思い出せないくらいに。


 蹴り封じのための衣類を乱暴に抜き取り、自由になった足をひろげると、中心で息づくペニスを少し強いくらいの力で上下に擦った。液がにじみ出る先端に指を押し付けて動かし、くちゅくちゅと音をさせる。

「ぁ、ぁん……っ」
潤んだ声と同時に、ゾロの手中でペニスがわずかに膨れ、白濁液が迸り出た。



 まだ息も収まらないうちに抱えあげられ、サンジは今まで腰掛けていた木箱の上に膝をつく形になった。サンジ自身の精液でぬめるゾロの指が、後ろの穴からゆっくりと入ってくる。時間をかけて一本の指が、続けてもう一本が途中の敏感な部分を刺激しながらサンジをほぐす。
「っくぁ、はっ、はぁッああ……ッ」
放出したばかりのペニスが、また熱を帯び、痛みを伴って立ち上がりかけている。それはすぐゾロにも気づかれたらしく、指の動きが前立腺を責めるものにかわった。内側から押し出されるように、先端に露がにじみはじめる。
「い、いかげんにっしろよっ……んっあ、あぅっ」
「怒るか感じるかどっちかにしろ。オレのほうが溜まってんのにまた先に出すつもりかコラ」

おまえがやっとんじゃーーーーーッ!!!!

サンジの心の中でムートンショットが300発くらい炸裂した。


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